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ビーケーワン書評コラム

ミックス定点観測

[15]お手本的インターネット批評の射程(2001.8.29)

インターネットは未来を変えるか?
著者:歌田 明弘著
出版:アスキー
発行年月:2001.7
本体価格:\1,600


 『週刊アスキー』創刊以来、連載がつづいている歌田氏のインターネット批評のうち、ここ3年分を2冊の本にまとめたものです。タイトルはいずれも同じで、副題が「現代社会を読み解く」と「科学技術を読み解く」になっています。ご注意ください。この連載コラムの初期のものは、すでに『仮想報道』として刊行されていますが、こうして並べてみると、インターネット情報というものが、いかなる場合に有効で、どこまで行けるのかがわかります。

「現代社会を読み解く」では、ニューヨークタイムズなどのウェッブ記事や経済学者クルーグマンのサイトを参照して日本経済を外から眺めたり、ナップスターと著作権問題を論じたり、翻訳ソフトを使って韓国の落選運動をレポートしたり、と多彩な話題が論じられています。また、事件の渦中にある教団や法輪功のサイトを読み解き、インターネットに刻まれた戦争の傷跡をたどってみせるあたりは「仮想報道」の先駆者ならではの的確さが印象的でした。古い政治図式や偏見にとらわれていないところが著者の持ち味で、読後感がさわやかなのはそのせいだと思います。

「科学技術を読み解く」では、コンピュータに「常識」を持たせる試みや、生命科学の最前線をレポートしたものをはじめとして、死と科学の関係や宇宙・ロボット・ナノテクノロジーなどの話題が満載でした。私がおもしろかったのはユナボマーをあつかった「反テクノロジー」の章で、「あの人はいま」を知るのにインターネットはなかなか使えると感じました。

 全体として、歌田氏が使っているサイトは英語圏のものが多いようです。日本のサイトは公共のものも個人のものも「貧弱だ」「夢がない」といった文脈で引き合いに出される程度です。英語が読めないとインターネットを一級の情報源として使えないらしいということはあるにしても、日本語圏でも公共的な組織がもっとがんばる必要があるでしょう。しかし、それも組織文化そのものから見直していかないとむずかしいらしいということは、この2冊から感じ取れることでもあります。 (2001.8.29.野村一夫)

【目次】
第一章 日本経済――ウェブから混迷経済を読み解く
第二章 グローバリズム――世界経済に何が起こっているか?
第三章 資本主義――インターネット資本主義と消費者の時代
第四章 政治――インターネットは政治を変えるか?
第五章 メディア――資本の論理に侵蝕されるネット時代のジャーナリズム
第六章 事件――犯罪の背後にあるもの
第七章 海外ニュース――「世界への窓」を通して見る騒乱と怒り
第八章 戦争――ネットを通して聞く人々のうめき声
第九章 ゴシップ――クリントン・スキャンダルとアメリカ社会
第十章 変わりゆくスパイ稼業


インターネットは未来を変えるか?
著者:歌田 明弘著
出版:アスキー
発行年月:2001.7
本体価格:\1,600
「科学技術を読み解く」


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SOCIUS.JPドメインへの初出 7/20(thu), 2002  
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