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ビーケーワン書評コラム

ミックス定点観測

[14]大学の教室に響くニール・ヤング論は電脳羊の耳に届くか(2001.7.23)

精解サブカルチャー講義
著者:阿部 嘉昭著
出版:河出書房新社
発行年月:2001.6
本体価格:\1,900


 文字通り立教大学での講義ノートを公開したサブカルチャー論です。私自身も多少はこういうことを講義で話しますが、もともと蘊蓄がないので、なかなかこの著者のようにはいきません。相当濃いサブカル論です。こういうものを聴いて単位が取得できるとは、いい時代になったものです。

 全体はふたつにわかれています。前半が「60−70年代再考」で、後半が「90年代という廃墟」になっています。後半の「廃墟」は「バクシーシ山下」や「やまだないと」などの90年代サブカル定番(?)が論じられていますが、私には対象自体が著者の言う通り「廃墟」にしか見えないので、評価は留保しておきます。

 前半は、ロック中年向けの内容で、ある意味ではこちらも定番テーマが論じられています。考えてみれば、このころはジョン・レノンもニール・ヤングも大島弓子もサブカルあつかいでしたから、当然といえば当然でしょう。今となってみれば、かれらは文化の王道を歩んでいたわけです。しかし、それだけに神話が多い。著者はそれを現在の視点から丹念に再評価していきます。たとえばレノンの崩壊感覚についての一連の議論はおもしろいです。

 それにしても、これだけの蘊蓄を聴いて理解できる学生はどのくらいいるのでしょうか。少なくとも理解する気力を持つ「遅れてきた青年」は8人に1人ぐらいというのが、これまでの私の実感です。むしろこういうサブカル論は大人の世界にこそフィットするように思います。一見すると若者向けの本のようですが、中年どまんなか世代向けのような気がしました。

 ところで、80年代をすっぽり抜いているところに著者の皮肉が効いていますね。一般には80年代ってサブカル全盛と見られていますが、でもそれらはすべてメジャーな公認カルチャーだったから、ほんとのサブカルなんかなかったということでしょうか。ということは「80年代という空虚」という書かれざる章が本書には含まれていると想像することもできそうです。 (2001.7.23.野村一夫)


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SOCIUS.JPドメインへの初出 7/20(thu), 2002  
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