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ビーケーワン書評コラム

ミックス定点観測

[13]視覚文化研究の方法論的総合(2001.7.8)

ヴィジュアル・カルチャー入門
著者:ジョン・A.ウォーカー著,他
出版:晃洋書房
発行年月:2001.5
本体価格:\3,200


 最近はカルチュラル・スタディーズ系の研究書や入門書が一気に花と開いています。もともとカルスタは、それまでもっぱら社会学的な視点から研究されてきたポップ・カルチャーなどを洗練された人文系の手法を導入することによって見直すという側面がありました。それはもちろん伝統的な人文系研究が無自覚に持っていた非社会性や差別構造への無関心を払拭するということも意味していました。その点では、ウォーラーステインが整理していたように、カルスタは人文学と社会科学の総合なのです(『社会科学をひらく』藤原書店)。

 そうした総合が生じてみると、従来のディシプリン別のアプローチが陳腐化して、今度は対象に即した新しい仕切り方が必要になってきます。それが「言説」であったり「音楽」であり、そして「視覚文化」になるわけです。つまり、美術も工芸もデザインも演劇も映画も広告もコンピュータゲームも、ひとつのアリーナで研究するというスタンスになります。本書は、そうした仕切り方に即した入門書です。

 この領域では「美術史」という伝統的な学問があります。ブルデューの著作を引き合いに出すまでもなく、それらを相対化した上で、「ヴィジュアル・カルチャー」の理論的再定義をしなければ、たんにおもちゃ箱をひっくり返すだけになってしまいます。ですから、理論的な総論をきちんと踏まえておくことが重要です。この種の入門書は、たんに入門書であるだけでなく、そうした積極的な役割を担っているように思います。通信教育大学オープン・ユニバーシティの教科書がカルスタ発展の大きな推進力になったように。

 ざっと眺めてみましたが、とにかく目配りがすごいですね。著者たちは「美術史」の乗り越えをもくろんでいるようなので、それを意識した記述や事例(とりわけ現代美術)が多いように思いましたが、それだけにポップなものしか知らない社会学者には新鮮なところもありました。読書案内をかねた詳細な「註」をもとにすれば系統的な研究もできそうです。翻訳もきちんと明示してありました。 (2001.7.8.野村一夫)

【目次】
第1章「カルチャー」とは何か?
第2章「ヴィジュアル」とはどういうことか?
第3章「ヴィジュアル・カルチャー・スタディーズ」とは何か?
第4章 理論とどのようにつきあうか
第5章 生産・流通・消費のモデル
第6章 さまざまな制度
第7章 視線、眼差し、監視
第8章 ヴィジュアル・リテラシーと視覚の詩学
第9章 さまざまな分析方法
第10章 ヴィジュアル・カルチャーの快楽
第11章 規範――価値とは何か?
第12章 ヴィジュアル・カルチャーと商業
第13章 ニュー・テクノロジー


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SOCIUS.JPドメインへの初出 7/20(thu), 2002  
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