Socius  ソキウス   著作+制作 野村一夫
 http://socius.jp 

現在地 ソキウス(トップ)>ビーケーワン書評コラム

ビーケーワン書評コラム

ミックス定点観測

[9]和歌山毒入りカレー事件報道を疑う理由(2001.5.22)

マスコミは何を伝えたか
著者:佐藤 友之著
出版:解放出版社
発行年月:2001.5
本体価格:\2,400


 マスコミ報道の問題はこれまでもさんざん批判されてきました。とくに1985年あたりから犯罪報道の見直し議論が本格的に始まって、少しずつ人権に配慮していこうじゃないかという議論になっていったと思います。呼び捨て報道から容疑者呼称への転換などはその一例でした。ところが1995年のオウム事件で一気にそうした雰囲気は吹っ飛び、なんでもありの状況になりました。事件そのものの凶悪さや不気味さのために、あまり意識されていないようですが、犯罪報道はとくにひどくなりましたね。

 ま、こういう物言いに対して「人権派」あるいは「人権屋」と呼ばれるご時世ですから、マスコミ報道は読者や視聴者の意識をそのまま反映しているだけなのかもしれません。

 本書は和歌山カレー事件報道をかなり徹底して検証したジャーナリズム論です。事件が警察とメディアによっていかにして構築されていったのか、そのプロセスを丹念に再現し、ひとつひとつの節目における恣意性を指摘しています。また、例証されたり比較対照された歴史的事件や報道例についても、めんどうがらずに復習してくれますので、これまでの議論や事件を知らない若い方にもいいんじゃないでしょうか。

 報道のありようについては、やはり自分がよく知っている事件を徹底的にふりかえってみるのが役に立ちます。この本を拾い読みするだけでも、報道って一見論理的にやっているように見えて、けっこうその場しのぎで感情的に決めつけているものだということが、いやというほどわかります。また、その根拠として警察情報がいかにして使われるかということも。著者の指摘は多少くどいと感じるほどですが、それだけ材料が多いということなんでしょう。

 ただし著者はとくに冤罪説をとっているわけではありません。ひとつの事件が伝えられるときに、じっさいに何が起こっているのか、そしてそれがどのような表現になるのかを追っているだけです。巻末には24ページにもわたる「和歌山毒入りカレー事件関係テレビ番組一覧表」があって、これだけでもジャーナリズム論の卒論が書けてしまいそうです。(2001.5.22.nom)

【目次】
第1章 事件発生
第2章 疑惑
第3章 逮捕
第4章 裁判
第5章 報道被害
和歌山毒入りカレー事件関係テレビ番組一覧表


現在地 ソキウス(トップ)>ビーケーワン書評コラム
SOCIUS.JPドメインへの初出 7/20(thu), 2002  
このページのURLは http://
Kazuo Nomura(野村一夫) 無断転載はご遠慮ください。リンクはご自由に。
Valid XHTML 1.0!Document type: XHTML 1.0 Transitional