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ビーケーワン書評コラム

ソックス定点観測

[21]21世紀の地球社会にどう立ち向かうか(2001.10.25)

暴走する世界
著者:アンソニー・ギデンズ著,他
出版:ダイヤモンド社
発行年月:2001.10
本体価格:\1,500


 アメリカの同時多発テロ事件以降というもの、地球社会というスケールでものごとを考えていかないと、にっちもさっちもいかないらしいことが誰の目にも明らかになった。もちろん、みんな、そんなことぐらいわかっている。問題は「では、どう考えればいいのか」だ。些末にこだわるニュース解説にいくら耳を傾けてもグランドヴィジョンは見えてこない。国家中心史観とも言える国際関係論的な枠組みでは、21世紀は読み切れないのではなかろうか。もどかしい思いをしておられる方も多いと思う。ここはひとつ、マクロに語ることのできる賢者の見識を参照したい。

 ギデンズは現在もっとも著名かつ多作な社会学者である。守備範囲はきわめて広く、古典的社会理論から国民国家論・暴力論・リスク社会論などを展開している。かれの理論的全容については最近翻訳された『ギデンズとの対話』(而立書房)で手早く知ることができるようになった。社会学者としては異例なことだが、イギリス・ブレア政権のブレーンでもある。

 新著『暴走する世界』では、グローバリゼーションがたんに国民国家のしばりをゆるめるだけでなく、地域的ナショナリズムを高揚させるものでもあること、そして現実に進行する不平等の拡大が多様な形で問題を発生させているという認識から始まる。にもかかわらず国家は旧時代の風化した制度(貝殻制度!)を捨てきれないでいる。ギデンズは貝殻制度的な思考をやめて、このさい、国家、家族、仕事、伝統、自然についての語り方自体を変えるべきだと提案するのだ。

 たとえば自然に存在するリスクより、人間の知識の深化によって新たに生じる人工リスクこそが予測不可能なのだということ。伝統なるものとして真理視されて語られているものが、じつはここ2世紀に発明された近代の産物であること。たとえばスコットランド・キルトは産業革命の産物である。このように多くの伝統が「ねつ造された伝統」であると考えれば、「伝統に還れ」と主張する原理主義もまたグローバリゼーションに寄生する近代的な産物なのである。

 暴走する世界をどう制御するのか。そもそも可能なのか。ギデンズは「できる」と言う。そのためには、どうやら私たち自身がコスモポリタンとして地球社会を学び直さなくてはならないようである。(2001.10.25.野村一夫)

【目次】
第1章「グローバリゼーション」の本質
第2章 多様化する「リスク」
第3章「伝統」をめぐる戦い
第4章 変容をせまられる「家族」
第5章「民主主義」の限界


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SOCIUS.JPドメインへの初出 7/20(thu), 2002  
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