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ビーケーワン書評コラム

ソックス定点観測

[19]世界システム論から歴史的現在を見直す(2001.9.20)

ウォーラーステイン(講談社選書メチエ 222)
著者:川北 稔編
出版:講談社
発行年月:2001.9
本体価格:\1,500


 講談社選書メチエが早くも200冊を越えました。なかでも最近好調なのが「知の教科書」シリーズです。これまで『ユング』『カルチュラル・スタディーズ』『フーコー』が刊行されています。今回は『ウォーラーステイン』です。

 ウォーラーステインは「世界を一体としてとらえる」という世界システム論の提唱者として注目されてきました。しかし、その全容はとても掌握しがたいものでした。かれの主著がまだ完成していないからです。一応『史的システムとしての資本主義』がそのアウトラインを提示した著作として知られています。でも、それとて読みやすいものではありませんでしたから、例によってお手軽な解説書がほしくなるのです。本書のような本を待っていました。

 本文232ページの半分弱で、かれのプロフィールと基本主張が把握できます。アフリカ研究者として早くから名をなしたにもかかわらず、1968年を転機として研究のスタンスを大きく広げ、フェルナン・ブローデルの『地中海』の影響から世界システム論を構想し、膨大な著作活動を展開するプロセスが描かれています。また、かれの仕事のキーワードとして「帝国と世界経済」「中核と周辺」「ヘゲモニー」「反システム運動」「長期波動」が選ばれ簡潔に説明されています。巻末では主要な六つの著作が作品解説されています。

 これだけでもウォーラーステインの思想像はそれなりに輪郭をえてくるわけですが、試みとしておもしろいと思ったのは、残り半分強を占める「三次元で読むウォーラーステイン」のところでした。これはいわば応用編で、ウォーラーステインを使うと何が見えてくるかを各執筆者がそれぞれの問題関心から試みたものです。編者の執筆による「イギリス風朝食の成立」なんか、「おや?」と思うところから、ムクムクと世界システムが立ち現れてきたという感じでした。こういう能動的解説はなかなかいけます。

 では、今回のアメリカ同時多発テロ事件について、ウォーラーステインのような人はどのように見ているのでしょうか。画一的報道が続いているだけに気になるところです。かれが所属するニューヨークのフェルナン・ブローデル・センターの公式サイトには "September 11, 2001 - Why?" と題する「コメント」が掲載されています。よろしければ、こちらもご参照ください。(2001.9.20.野村一夫)

http://fbc.binghamton.edu/72en.htm

【目次】
プロローグ ウォーラーステインと現代世界
生い立ちと思想
ウォーラーステインのキーワード
三次元で読むウォーラーステイン
作品解説
エピローグ ウォーラーステインの魅力


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SOCIUS.JPドメインへの初出 7/20(thu), 2002  
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