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ビーケーワン書評コラム

ソックス定点観測

[18]アドルノの授業をひやかしに行く(2001.9.8)

社会学講義
著者:アドルノ著,他
出版:作品社
発行年月:2001.8
本体価格:\3,400


 昔の有名教授の講義は総じておもしろくありませんでした。本をたくさん書いている先生は話し下手のことが多いものですし、そうでない先生はしばしばアドリブで話すものですから、準備不足が見え見えなことが多いのです。

 でも、アドルノのような、ひねりの利いた巨匠が学生たちに向かっていったい何を話していたのか、これはいささか気になります。本書は1968年にフランクフルト大学で講義された「社会学入門」をそのままテープ起こしした歴史的名演の記録です。海賊盤用語で言うと「オフィシャル・ブート」とでも申しましょうか、ライブ感たっぷりの講義録になっています。アドルノは調子の悪いマイクを呪い、大声を張り上げ、学生たちはそれを笑い、抗議し、ヤジを飛ばします。

 と言っても、おおむね講義はまったりと進んでいて、一昔前のスタンダードな「社会学とは何か」が語られています。社会学を他の学問と区別するものは何か、統計調査で見えないものは何か、実証主義の限界とは何か。基本にしぼった講義とは言っても、そこはアドルノ。かれらしく直線的な説明ではないので、うんちくのある方はそれなりに深読みできるでしょう。

 私にとって意外だったのは、アドルノがジンメルや闘争理論を「驚くべき人畜無害な性質」と批判していることでした。社会学史的には比較的近い親戚のように感じていましたから。それに対してアドルノが何かと頼りにするのがウェーバーで、ウェーバー生誕百年をきっかけとする60年代後半の熱いまなざしを感じることができます。もちろんカリスマ論についても見解を述べていますが、カリスマ的支配が官僚制的支配と対立するというはまちがいで、むしろカリスマは官僚制と融合したときに大きな力となるとの指摘は新鮮でした。

 ともあれ、1968年のフランクフルト大学に留学したつもりで、あこがれのアドルノ先生の授業をひやかしに行ってみませんか。 (2001.9.8. 野村一夫)


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SOCIUS.JPドメインへの初出 7/20(thu), 2002  
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