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ビーケーワン書評コラム

ソックス定点観測

[16]玄人筋の社会学者ジンメルの逆襲(2001.7.11)

ゲオルク・ジンメルと社会学(Sekaishiso seminar)
著者:居安 正編,他
出版:世界思想社
発行年月:2001.6
本体価格:\1,900


 マックス・ウェーバーのように広く知られた社会学者がいます。最近ではハーバーマスやブルデューも知名度は高いですね。かれらはたんに社会学にとどまらず、きわめて広い範囲で著作を書き、問題提起をしたので、それは当然のことでしょう。

 しかしその一方で、同じように広範な著作活動をしていながら、社会学のトレーニングを受けた者だけがよく知っているビッグネームもいます。ミードやトマスやマートンやゴフマンがそれで、社会学の玄人筋では評価が高く、社会学の勉強をしだすとすぐにおなじみになる名前です。いい悪いは別にして、ある意味では、かれらの仕事を引き合いに出しながら社会学的世界を語るというのが、まったりした社会学の世界です。経済学者や法学者とこういう話はできません。

 そうした「玄人筋系」(?)の社会学者の代表格としてゲオルク・ジンメルがいます。

 ジンメルはちょうど一世紀前のドイツ・ベルリンで活躍した人で、社会学者というより、本質は哲学者です。しかし、かれの考案した形式社会学や社会学的エッセイの数々は、神経症でへこんでいたマックス・ウェーバーに力を与え、アメリカ社会学の仕切り直し的スタートラインというべきシカゴ学派に大きな影響を与えました。一時期人気のあったゴフマンなんかはジンメルの再来と言ってもいいようなスタイルで新しい社会学的世界を構築しました。

 とまあ、ここまでは社会学史的な評価です。過去の話。ところがそれが1990年代あたりからヨーロッパやアメリカで俄然ジンメル研究が盛んになり、再評価が進んでいます。『貨幣の哲学』が英訳されたり、著作集が企画されたのが大きいのでしょう。日本でもジンメル研究会が組織され、ジンメルに言及した研究書もふえています。また、最近、初期パーソンズの未公開のジンメル論が日本の研究者によって「発掘」され話題になりましたね。これは『思想』で特集されました。

 ここで紹介する二冊の本は、そのジンメル研究会が企画したものです。幅広いテーマで新旧世代の研究者が論考を寄せていますので、ジンメル研究の状況が俯瞰できる便利な本になっています。なるほど、ジンメルは「社会学者にとっての石切場」と言われただけあって多彩ですし、きわめて現代的と思われるテーマについて一世紀前のジンメルの言説が妙にリアルに響いたりします。ジンメル・マジックとでも申しましょうか。まあ、貨幣論を売春から分析してみせるような人でしたからね。ジンメル自身の文章は難解ですので、こういう本から入ってみられるといいでしょう。

 ただひとつ残念なことは、じつは私も執筆予定者だったんですよ。締切日まで手が着かず、執筆時間もとれそうになかったのでリタイアしました。でも、あれからけっこう時間がたってますねえ(笑)。ま、それはともあれ、たまにはジンメル読んでブレーンストーミングいたしましょう。 (2001.7.11.野村一夫)


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SOCIUS.JPドメインへの初出 7/20(thu), 2002  
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