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ビーケーワン書評コラム

エディター書評2000-2001年

これはたんなる続きでもなければ書き換えでもない

社会的ジレンマ 「環境破壊」から「いじめ」まで
(PHP新書 117)
著者: 山岸 俊男著
出版:PHP研究所
サイズ:新書 / 227p
ISBN:4-569-61174-5
発行年月:2000.7 本体価格: \660


 著者の『社会的ジレンマのしくみ』から10年。しかし、これはたんなる続きでもなければ書き換えでもない。前回が一回ひねりだとすると、今回のは二回ひねりである。

 社会的ジレンマとは、マイカー通勤による渋滞がそうであるように、こうすれば良いとわかっている協力行動(電車やバスでの通勤)を取ると本人にとって好ましくない結果が生まれてしまうために(遅刻や不快な思い)「わかっちゃいるけど、やめられない」状態になり、その結果、誰にとっても好ましくない状態(どうしようもない渋滞)になってしまうことをいう。社会問題論では代表的な基礎概念である。

 しかし著者は今回これをさらに展開して、一気に社会理論の域にまで高めた。こういうところから社会構想のヴィジョンが開けてくるのにはいささか驚く。ポイントは、行動を引き起こすものは心(動機)ではなく環境に内在する要因(インセンティブ)であること、だから社会的ジレンマを解決するためには、人びとが協力行動を取らざるを得ない環境を作って、みんなが協力するなら自分も協力するという「本当のかしこさ」を生かすことにある。

 終始サービス精神あふれた説明が続くが、最新の進化心理学に啓発されての緻密な議論に学ぶことが多い。「心の教育」「しつけ」「道徳」「倫理」「管理」といった概念にしか問題解決の糸口を見いだせない人に熟読していただきたい好著である。

(2000/07/24)


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SOCIUS.JPドメインへの初出 7/20(thu), 2002  
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