Socius  ソキウス   著作+制作 野村一夫
 http://socius.jp 

現在地 ソキウス(トップ)>ビーケーワン書評コラム

ビーケーワン書評コラム

エディター書評2000-2001年

転んでも起きても〈モンダイがある〉な近代日本

斎藤美奈子『モダンガール論』マガジンハウス


 良妻賢母は20世紀の新思想だった。国家総動員に熱を入れた婦人運動家たちは戦争に女性解放の可能性を見た。アンノンは家事を一気にカジュアルでファッショナブルな趣味の世界に変えた点で電気洗濯機と同じくらい女性解放を進めた。

 いつもの美奈子スタイルでこう喝破する本書は、長年の謎を解いてくれる本だ。素材としては近代女性史っていうことになるのだけれど、歴史って、こう語るのが正しいんじゃないかなと思う。

 いつの時代にも夢見る女の子たちがいる。時代に制約されながらも、けなげに、あるいはしたたかに、その夢に踏み込む女の子たちがいる。彼女たちの夢や理想が、階級や階層そして性差別のドツボの中で希望を与え、ときには解放の幻想をつくりだし、そしてさらにドツボにはめていった。

 著者はその百年間をあくまでも当時の女の子たちの息づかいに即して語る。「女学生」も「職業婦人」も「労働婦人」も「軍国婦人」も「女工」も「女中」も「女給」も「腰かけOL」「専業主婦」「女子大生」「翔んでる女」も、本書では等身大の女の子である。今では差別語と見なされるような女のレッテルが、それぞれの時代にはそれなりに夢のある言葉だったのだ。ただ、その夢の裏面には過酷な現実がべったり貼り付いていただけなのである。

 キュートとしか言いようのない女学生・平塚らいてふの写真にもおどろくが(ジェンダー目線で申し訳ない)、進歩的女性の代表格だった羽仁もと子・奥むめお・市川房枝が廬溝橋事件のあとにそれぞれに発表した翼賛的なアピール文にもおどろかされる。総動員体制について一般に流通しているステレオタイプな陰謀史観的説明は、軍部をスケープゴートにした戦後の神話なのだと実感する。

 そして最後に、もう「上」がないことを知った90年代の女性がハマったのは何か。それは「癒し」と「自分探し」――女も男も出世を目指した「近代の物語」がすでに終わっていることに(元)女の子たちはとっくに気づいているということか。

【目次】
はじめに モダンガールの野望について
第1章 将来の夢、みつけた
 女学校に行かせて!
 お嬢さんは職業婦人
 主婦ほど素敵な商売はない
第2章 貧乏なんて大嫌い
 労働婦人ってなんだ
 ネオンの街で生き抜く法
 みんな「働く主婦」だった
第3章 夢と現実のはざまで
 女性誌が教えてくれたこと
 キレた彼女が立ち上がるとき
 ああ、すばらしき軍国婦人
第4章 高度成長の逆襲
 めざせOL、女子大生
 あなたも私も専業主婦
 翔んでる女がぶつかった壁
終章 バブルが消えて、日が暮れて
もっと知りたい人のための文献案内
あとがき


現在地 ソキウス(トップ)>ビーケーワン書評コラム
SOCIUS.JPドメインへの初出 7/20(thu), 2002  
このページのURLは http://
Kazuo Nomura(野村一夫) 無断転載はご遠慮ください。リンクはご自由に。
Valid XHTML 1.0!Document type: XHTML 1.0 Transitional