Socius  ソキウス   著作+制作 野村一夫

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社会学感覚
凡例(初版)
○本書は、独立しているが相互に呼応しあう二三の章からなっている。それらを便宜上七つのテーマ群にまとめて配列した。各章の連関はそのつど脚注で示した。
○本書下段の脚注は三つの目的でつけられている。第一に初学者のための読書案内。第二に引用個所の明示。第三に論述のさい筆者が参照した文献の明示。しかし、基本的には読書案内を念頭において書かれている。とくに若干の評価的コメントをつけたものは初学者用である。また、社会学では常識化していることについても、関連する解説書などを提示するよう心がけた。そのため脚注はやや〈過剰ぎみ〉になっている。
○文献については、著者・訳者・論文タイトル・書籍タイトル・出版社・刊行年の順に示した。書籍のタイトルは『』、論文のタイトルは「」で区別した。また一般的な文庫・新書・叢書の場合は入手しやすいように出版社名のかわりにシリーズ名を使った。欧文文献の場合、とくに邦訳のない場合をのぞいて、邦訳書のみ示すことにした。これは本書が入門的性格をもつため、さしあたり必要性がないこと、また無用な混乱をふせぐためでもある。また、かならずしもオリジナル論文にこだわらないで、同じ論点を示した一般書があれば、そちらを示すことにした。これも同様の理由による。
○同じ章内ですでに示した文献については、細かいクレジットを省略し、「前掲書」「前掲訳書」と表記した。ただし、前の提示個所とかなり離れていると判断したときはあらためて表記しなおした。
○引用文は原則として邦訳書によった。その結果、用語法や表記法が本書本文と不統一になってしまったが、統一するために訳文を改変することはしていない。ただし引用文につけられていた傍点は、技術上の問題から本書ではいっさい省略した。
○脚注における外国人著者名の表記も訳書の表示にしたがった。そのため本書本文と一致しない場合もあるし、フルネームかどうかも訳書によってまちまちである。例1――マックス・ウェーバー/マックス・ヴェーバー/ウェーバー。例2――P・L・バーガー/ピーター・L・バーガー/ピーター・バーガー/バーガー。
はじめに(【増補】ブックガイド・九〇年代の社会と社会学)
一九九二年三月に本書を刊行して以来、満六年が経った。幸いなことに本書はさまざまな大学で教科書として採用されたこともあって、これまで六刷を重ねてきた。思えばこの六年間、じつにさまざまなことがあった。平成不況、薬害エイズの事件化、オウム真理教の巨大犯罪、阪神大震災、インターネットの急速な普及、金融界・大蔵省スキャンダルや大型倒産など。従来的な社会常識ではとても対応できないシビアな現実に立ち向かわなければならない時代だと感じる。
このような新しい現実に対して社会学はどのような視点を提供できるのか。社会学的解読の必要性はいやましに高まっている。社会学教育もそれに応えなければならない。もともとそうした思いで書き始めた本書だったが、その実質的な執筆期間は一九九〇年夏から九一年の秋であり、研究水準はほぼ八〇年代のものである。この点で、これからの世紀の転換期に社会学を学ぶ人たちの期待に応えるにはいささか古くなってしまった感がある。「六年、ひと昔」というべきか、ほんとうに印刷媒体の寿命は短くなったものだ。
そこで第七刷にあたって増補をおこなうことにした。本来なら該当する各ページに追加説明を加えるのが適切なやり方だと思うが、いかんせん、それでは全面的な改版になってしまう。次善の策として、本編はそのままとし、かわりに巻末に一九九〇年代の社会のできごとと社会学の研究動向とをまとめて掲載することにした。いささか付け焼き刃的な処置になるが、このあたりが印刷媒体のコスト的限界ということだ。
原稿用紙換算で二百枚ほどの増補だが、それでも網羅的な説明は不可能である。やむなく本編の下段でおこなった読書案内的な説明にとどめることにした。興味のわいたテーマについては、それぞれの参考文献に直接あたって確かめてほしい。また、現在進行形のできごとについては解釈が一義的に定まるわけではなく、論争的段階にあるものがほとんどであろう。ここではとりあえず議論のスタンスをある程度選択した上で説明し、論争的広がりについては示唆するにとどめた。議論のたたき台になればよいという立場である。
説明は本編の章立てにしたがっておこなう。今回新たに追加した五つの章をのぞいて、各章の補足説明という形になっているが、通読すれば「一九九〇年代の社会と社会学」として読んでいただけるかと思う。
九〇年代の日本社会学の発展はまことに著しい。私自身、本編で取り上げた二十三のテーマについては折りにふれてチェックしてきたものの、研究のスピードに追いつけない状態である。本来ならば取り上げなければならない論点や文献についても、私自身がきちんとフォローしていないために割愛したものもあるし、最近の私の読書傾向を反映して、章によってバラツキが生じていることもあらかじめお断りしておきたい。執筆時間の制約もあって今回は無理しなかった。
本編と同様、初級者向けに内容をセーブして、アクセスしやすい本を中心に紹介しているが、どうしてもはずせない翻訳書や研究書もふくまれている。その分、やや中級者向けの説明がまじってしまうけれども、初級者といえども現在の書店に並んでいる社会学書の位置づけを概略知っておく必要はあるわけで、その目安にでもしていただければ幸いである。