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私の2015年のモットーは「偶有性の海に飛び込め!」(茂木健一郎)であった。もともと自分の物語にぼんやりと存在してきたもの(ときどき噴火する)を言い当てられたような気がしたのだ。じゃあ、ちゃんと意識してそれでやってみようと決意して1年間やってみた。意識してやってみると次のような細則が得られた。
1 物事をデフォルトから考え直すこと
2 未知の領域にも飛び込んでみること
3 自分の立場を固定しないこと(主義者にならない)
4 表面的な矛盾を回避しないこと
5 せっかくのご縁や支援を受け止めること
6 拙速であってもいいから応答すること
7 世間が決めたジャンル設定に従わないこと
8 捨て石も辞さないこと・あえてたたき台になること
こんなことをネットに何度も書いたように思う。これは誰かに向けた説教なんかではなく、自分に言い聞かせてきた細則である。
そのおかげで新しく学んだことは数多い。同時に、過去に学んできたことが呼び覚まされたように蘇っては次々にリンクしていくことが驚異であった。そうした知識のネットワークを可視化するためにメモやノート(Evernote)やブログやSNSに書き残すとともに、本の形をしているものであれば、なるべく本を買うようにしてきた。それなら物として目の前にあるから忘れない。そのせいで2015年は支出における本代係数が抜群に高くなった。科研で出した研究計劃を落選しているにもかかわらず実行しているせいとも言える。私費では手が出ない本も(ここ5年ぐらいやっていることだが)大学図書館に指定して入れてもらうようにしてしてきた。うちの大学にはもともと社会理論系があまりなかったのだが、英語圏の基本書を中心に相当数入れてもらった。専門のエンサイクロペディアとアンソロジーとリプリントセットが中心である。先端知である必要はないし、各専門分野の第一人者のフィルターを経たものに限定するとムダがないからである。
最後残ったのは理論的なスタートラインをどこに設定するかということである。これは意識的に設定するのであって、真理かどうかは問題ではない。「ひとつの真理が存在する」というのも、ひとつの仮説に過ぎない。それはあえて設定するものであって、決意とか信仰に近いものだと思う。自覚していれば、それでいいのだ。ここで「主義者」になればよい。
2016年初頭にあたって、スタートラインを設定しよう。「社会に外部は存在しない」これである。デュルケムが百年前に主張したこの命題を受け容れられる人はきわめて少数であろう。社会学者でさえ、真顔でこの命題を公的に肯定できる人は少ないと思う。そういう命題だということは十分承知しているが、ここから始めてみて、どこまで行けるかを試してみることにした。今年の研究テーマは、その方法論的議論をしてみることにする。すでに出版計劃は用意してもらっているので、なんとかまとめるところまで行きたい。それはおそらく「つなぐ仕事」になるだろう。「つなぐ仕事」の(いまさらながらの)発見も昨年一昨年に高校生向けにまとめた成果であった(たとえば「大学入門」)。というわけで、2016年のモットーはこれだ。
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