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今昔物語関連を集める

今昔物語は中学生の時に角川文庫で本朝世俗編をもっていてぱらぱら眺めていた。日本思想史を追っていて、今昔物語が国学的正統古典から外されてきたことを知り、俄然興味がわいて福永武彦訳を読んでみると、とてもおもしろい。今昔物語は全部で1040話のこっているとのことである。これは日本の「千夜一夜物語」じゃなかろうか。その全部を見たいと思って図書館で下調べをした上で、古本をそろえているところである。現代語訳は東洋文庫でそろうことがわかったので、とりあえず本朝部を入手して、天竺・震旦編が届くのを待っているところだ。日本の古典全集には2種類あって、アカデミックなものと一般向けのものである。もちろん一般向けのものでないと読めないに決まっているのだが、こちらはいろいろ工夫があって、おもしろい。小学館の「完訳 日本の古典」は原文をゆったり組んで読みやすくした上で、巻末に現代語訳が2段組みで載っている。いろんな読み方ができる。全巻そろえたいくらいだ。新潮社の「新潮日本古典集成」は、原文のむずかしいところのわきに赤茶で小さくふりがなのように現代語訳が添えてある。まるで、授業で解説を聴きながら読む感じである。私は高校時代の古典の授業はほぼ100%寝ていたので(あのころは深夜放送ばかり聴いていたので)、今ごろその貴重だった時間を取り戻せと言われているような気がする。私はもともと古典が好きなのだ。だからのちに受験勉強の時には「徒然草」と「奥の細道」の解説書で勉強した覚えがある。教材としてではなく作品としてなら読めるのである。勉強嫌いの本好きなのである。1970年代後半から数年間は日本古典全集もののブームだったらしく、このようなものがいくつか出ていて、編集がとても凝っている。今昔物語の流れで、松谷みや子の「現代民話考」シリーズの最初の5冊がまとめて出ていたので買った。これは単行本刊行当時に地元図書館で読んでいて、20年ほど前に出した社会学のテキストでも参照したことがある。これなんか20世紀の今昔物語とも言えそうである。さらに、この流れで、もともと持っていた芥川龍之介全集も取り出して、眺めていると、おもしろかった。どこかの解説によると、先行研究はあるものの、今昔物語を再発見したのは芥川の小論だとのこと。江戸時代はほとんど存在を忘れられていたらしい。明日あたりには「御伽草紙」が届くはず。この系統は、源氏物語なんかの系統とは異質であるが、社会史的にはおもしろいし、日本思想を考える上でも「排除されつつも生き残った言説群」として評価できるんじゃないかと思う。まあ、そういうことは、すでに誰かがやっているとは思うけれども。こういうことは、自分で発見して、おもしろがっていればいいのである。