新入生へのメッセージ2011

昨日は経済学部のガイダンスでした。今年はホテルでの粛々とした入学式がないので、例年は入学式の後に大忙しにやってしまう学部ガイダンスを、じっくりやろうということになり、私もスピーチすることになりました。じつは昨年とほとんど同じスピーチです。「つながることの大切さ」を新入生に伝えておかなければならないというのが、ここのところの教務委員会での考えなのです。以下はそのメッセージの原稿です。
こんにちは、野村です。情報メディア関連を担当しています。まずは入学おめでとうございます。東日本大震災などで、大変な思いをして「いま、ここ」に来たという方も多いと思います。そういう方には「よく来たね!」「がんばったね!」と言いたい。
私のほうからはコミュニケーションの観点から二、三申し上げます。
まず「ネットワーキング」についてです。ネットワーキングとは、皆さんに即してかんたんに言えば「人間関係を連鎖的に作っていくこと」です。たくさんの友達を作り、その友達の友達と知り合ってゆくというプロセスを作り出すことです。
じつは、大学生活での大きな課題は、このネットワーキングなんです。つまり、「人間関係を連鎖的に作っていくこと」です。これはたんに友達だけでなく、先輩・後輩、先生、職員など、大学だけでもかなり大きなものになるはずです。
学内でのネットワーキングを積極的に進めていかないと、大学に来るのが面白くなくなってきます。たとえば、試験の前にも情報がまわってきません。
そもそも大学の単位は自分の努力で取っていくものですが、実態としては、友達のネットワークで取っていくものです。もちろん私たち教員は、ひとりひとりの努力の痕跡を答案用紙などから読み取って、個人としての努力を評価しようとしますが、友達のネットワークにはかなわない。「みんなでいっしょに賢くなっていく」という点から言うと、これはあながち悪いことではありません。いいですか。「みんなでいっしょに賢くなっていく」んですよ。
経済学部には一学年600人の人たちがいます。まあ、100人くらいであれば、そう苦労せずに自然に人間関係ができていきます。まとめてくれる人も現れて、そうして「ひとつのコミュニティ」のようなものができるんです。だから本人は何もしないでいても、なんとなく仲間内に加えてもらえる。
ところが皮肉なことに600人ともなると、「ひとつのコミュニティ」のようなものはできにくくなって、たくさんの小さな島のような集団に分散しがちです。それでもって、かえって人間関係が狭く薄くなりがちなんです。ひとりひとりが自分から積極的に友達づくりをしていかないと、いつのまにか孤立して、さびしい学生生活になってしまいます。
年に二回、成績の悪い学生を呼び出して修学相談というのをやるのですが、そういう学生はたいてい学内に友達がいないんですね。バイト友達がいくらいても、それだけではますます大学から遠ざかってしまう。遠心力が働くだけです。だから、学内にたくさんの友達や知り合いを作って、求心力を高める必要があります。つまり、この大学で新しい友達を作っていかなければならないんです。
私の知っている経済学部学生で、今回の震災の後に、友達300人の安否確認をした人がいます。すぐに確認できた人が250人。残り50人をいろんなメディアを使って連絡を取り続けて一週間でようやく全員の無事が確認できたそうです。ただし、被害にあった人はそれなりにいて、連絡が取れなかったのは理由がそれぞれあったとのことです。たとえば、津波で家が流されてしまった人もじっさいいたとのことでした。
ま、こういうふうに連絡を取りまくる人がいるからケータイがつながらないんだなと思うのは、かんたんです。私も「友達のメンテより、もっと勉強したら」と思わなくもなかったですが、むしろ私はとても感心しました。まず何より友達300人というのがすごい。そして、いろんなメディアを駆使することで、全員の安否を確認しきったことがすごい。こういう力が「ネットワーキング」なんですよ。
自分から声をかける。かけられたほうは、うれしいものですよ。
その第一歩は、自己紹介です。これは皆さんが思っている以上に重要です。なぜなら、だれも得体の知れない人と仲良くしようと思わないからです。何を考えているのか、何が好きなのか、どういう人なのかがわかってくると、ようやくコミュニケーションが可能になるものです。別の言い方をすると、「自分をオープンにすること」で初めて他人とコミュニケーションできる。このことをしっかり自覚しておいてください。
ちなみに、ここにいらっしゃる人たちは、私たち経済学部教授会が手間ひまかけて選び抜いた方々です。ほんとうに手間ひまかかりました。だから、変な人はいません。安心してください。自分をオープンにして大丈夫です。
来週20日の水曜には「クラスの集い」があります。22人前後でクラスを作り、基礎演習という科目を1年間いっしょに学びます。クラス担任もつきます。ここで最初の自己紹介をしていただきます。なるべく長い自己紹介を準備しておいてください。短い自己紹介はダメです。そこから新しいコミュニケーションは始まりにくい。たくさん話しましょう。
これは一種の大学デビューですから、手ぶらで臨むんじゃなくて、きちんと準備して、メモかお気に入りのものでも用意して臨んでください。ぼそぼそ話す人が多いですが、大きな声で話しましょう。大きな声ではっきりと自分をオープンにできるというのは、これも知性の証です。
経済学部では、こういう学びの絆づくりができるよう、たくさんの仕掛けを施しています。それらの仕掛けをきっかけにして、学びの絆を広げていってください。
第二点は「情報への感度を高めていこう」ということです。
まずは「新聞を読もう、本を読もう、雑誌を読もう」と言いたいのですが、今日は別の角度から言います。それは「ケータイの限界を知ろう」ということです。
今のケータイは上手に使えばかなりのことができますし、iPhoneなどのスマートフォンにすればパソコン並みになります。たとえば、いま現在、安くて、もっとも優秀な電子辞書はiPhoneですよ。辞書アプリを一万円分ぐらい詰め込んだら、の話ですけどね。
しかし、実態としては、そういう人は限られていて、現状では、ケータイは人間関係を保つ道具であって、知的に学ぶ道具になっていない。たとえばケータイやスマートフォンだけで大学水準のレポートは書けません。しかし、それにもかかわらず、ケータイで全部できると錯覚してしまうことが落とし穴なんです。
そこで、とりあえず2つのものを活用していただきたい。
ひとつは、手帳です。大学の授業では、けっこうたくさんの指示が出ます。「これしろ、あれしろ」というような指示です。これをしっかり受け止めてくれる学生はそう多くない。なぜなら手帳を中心に生活していないからです。大学では、こうした指示をだれもダメ押ししてくれないので、しっかり自分で情報管理をしなくてはなりません。手帳を持ちましょう。それでしっかりスケジュール管理をしてください。
もうひとつの道具はパソコンです。うちの大学にもコンピュータ教室があって、だれでもかんたんに使えます。けれども、正直言って、サービス過剰なんです。よくわかってなくても使えてしまうところがある。だから、たいていの人はパソコンやネットを使いこなせていない。やはり自分のマシンを持って、自分でしっかり管理して、自分でどんどん情報の世界を切り開いていけるようにしなければなりません。
やはりケータイだけではだめです。このことに気づかないで、ケータイだけで十分できているつもりになっている人が多いのです。ここはぜひ、ご両親か、おじいちゃん、おばあちゃん、親戚のおじさん、おばさんにパソコンをプレゼントしてもらいましょう。大学生活ではプリンターも必要ですよ。
最後に一点。国学院は、渋谷はもちろん、表参道にも代官山にも歩いていけるキャンパスです。ここはぜひ都心の大学で学ぶことのメリットを追求してください。都会的センスを磨いてください。そういうものは自然に身に付くと考えるのはまちがいです。いつまでたってもあか抜けない人はいる。だから、自覚的に学ぶことが大切です。これは社会に出る時の有力な武器になります。
残念ながら、この点について、私たち教員は学問一筋に生きてきましたので、うまく教えることができません。都会的センスやファッション感覚は、自分たちで街に出て、そこで学び取ってください。ご健闘を祈ります。